
教育と環境
2026年08月15日 12:59
Ba / ヤスノシン - 2026.06.14 -
今年、大学4年生になった息子は大手商社からの内定も決まり一安心だ。高校を卒業した娘も、引き続きシンガーソングライターとしてレコード会社との契約を更新し、いよいよ上京する事になった。
「好きこそ物の上手なれ」
そんな娘も中学生1年生の時は不登校だったが、自分の音楽をカタチにする喜びを知ってから変わっていった。私が音楽の仕事をしている事もあってか「何を教え、どのようにしたら子供の音楽的才能を引き出せたのか」と、よく聞かれる事があるが、正直に言って殆ど何も教えていない。私がやった事は、最初にギターを買ってあげた事と、歌うことが好きだったから、夜中でも歌えるように部屋をDIYで作った事。そして、娘が作った歌詞とメロディに曲を付けて、勝手に7曲を配信リリースしたくらいで、自ら訊ねてきたこと以外は何も教えなかった。この頃、息子からは「どうして妹の相手をそこまでしているのか?」と聞かれた事があった。「学校に行けないのなら、好きな音楽でしか将来の可能性が無いから」と言った事が今では的中したような気持ちだが、学校に行けない事を人よりも劣っているとは1ミリも思った事はなく、むしろ感性が豊かな証拠だと思っていた。結果、娘の凄まじい努力によって照明(証明)されたと言えるが、これは音楽に限った事ではなく、子供がネットゲームに夢中になっていたら「eスポーツ」の道(プロ)を歩めるように、たとえ才能やセンスが無かったとしても自ら対戦相手となって、罪悪感なくゲームに集中出来る環境を作っていたと断言できる。
「未来を守るプロセス」
私が子供に「あれをやれ、これをやれ」など言わなかった理由は、自分が本当にやりたい事や知りたい事しか自分の物になら無いし楽しくもない、何より自分で考えて発見する喜びや探求する謙虚さが大切だと思っていたからだ。そもそも、自分がやってみたい事や、決めた目標の中でしか「感性」も「センス」も磨かれない。
誰もが簡単に情報や知識を得られる時代に、時代遅れの知識(普遍的な事は除く)を与えたり要求をしても、子供は自分で自分を発見する事が出来なくなって生きずらくなる。それは、引きこもりや不登校生が増えている現代社会を見れば明らかだ。音楽に限らず、子供の求道心や探求心を養う事が最優先であって、その環境を可能な限り与えてあげる事が親の役割だと思っている。
子供の成長にとって必要な悩みや苦しみに対し、子供の「今」を守ろうと感情的になる傾向にあるが、子供の「未来」を守るために必要なプロセスがある事を知る必要がある。ここを間違えると親子の「自立」が遅れ、やがて子供は自分が何をやりたいのか、誰の何のために生きているのかと内側に疑問を生じて苦しむ事がある。この原因のひとつを私たちが理解する事の方が、子供に何かを教える事より難しいのかもしれない。
「進歩」
話が深い所に向かってしまっているが、息子は幼い頃からサッカーが好きだったから、サッカーが出来る環境をひたすら与えて練習にも付き合ってきた。中学生の頃は強豪チームだったが故に、監督からは理不尽な言動で精神的にも肉体的にも徹底的に追い込まれ、口も聞かないくらい悩み苦しんでサッカーを辞めようとした事があった。親としても監督に抗議したくなる程だったが、断腸の思いで叱咤激励し自分で乗り越えさせる事にした。そのように判断した理由は、私が子供と同じ次元に立っても建設的では無いと思ったからだ。現に、高校生になってからの息子は「あの時の苦しみと監督にはマジで感謝している」とよく口にしていたので、これで社会の荒波にも負けない「自立」への礎を築く事が出来たと感じた。私は子供に「勉強しなさい」と一度も言った事は無かったが、高校3年までしっかりサッカーをやり切った後は、勝手に勉学へと方向転換して大学進学を勝ち取った。これもサッカーを通して、レギュラー争い(嫉妬や妬み)が激しい環境で己を知り、自ら乗り越え磨いてきた「感性」と「センス」だと思う。
「本質」
4歳の頃から父親が居なかった私は、自分が望んでも得られ無かった環境だけは子供たちに与えていったと言っても過言ではない。しかし、環境は与える事が出来ても「感性」と「センス」だけは与えれるものではなく親子であってもそれぞれ違って、自分で悩んで乗り越えていく中でしか得る事も磨く事も出来ない。時には叱咤激励をしてあげたり、自分で乗り越えられるようにそっと見守ってあげる時間も必要なので、子供を通して親の「センス」が問われているのかもしれない。
親が子供から上手に「自立」して行かなければ、「才能」や「力」を発揮させる処か、足を引っ張る事もある。私もそうだったが、気づかない内に自分(親)のエゴや不安が優先していたり、子供をコントロール下にする事が守ることだと勘違いしている場合があるからだ。もちろん、大事な所は見逃さないようにアドバイスが必要だが、子供が本能的に向かっている所は「自立」であり、それ事態が「才能」である。親としては、お金や時間だけでなく信じる忍耐力が必要だが、子供はそれ以上に頑張っている。「自立」を支える視点で向き合う事がポイントだったと確信する事が出来た長年の子育てに心から感謝している。
追伸 :過去に、子供の健康心理として「性善説」と「斟酌(忖度)」をテーマとした論文を書いた事を思い出したので、また機会があればご紹介したいと思う。